白色テロと台北高校
1945年の日本敗戦後、台北高校の生徒はそれまでの時代のエリートとしての地位を失い、その国家アイデンティティをもう一度構築しなければならなかった。左翼思想に傾倒し、共産党に入党して逮捕され銃殺された者、二二八事件の際にこの世から消された者、独立的思想により政界から拒絶された者など様々だった。
王育霖／1919－1947
台湾台南市出身。台北高等学校高等科卒業、東京帝国大学法科卒業。在学中、日本の「高等文官試験」を受験して司法官の資格を取得し、日本本土初の台湾人検察官となった。
第二次世界大戦後、帰台して新竹市検察官を務めた。新竹市長郭紹宗少将の汚職事件「救済粉ミルク」（通称粉虫案）関与の捜査に結果が出ないことに憤って辞職した後、台北市建国中学で教鞭を執るとともに、民報法律顧問を務めた。
二二八事件の掃討期間に私服憲兵、警察に逮捕された。逮捕された後、王育霖は保安司令部第二処（もと西本願寺）に監禁され、拷問を受けた。三月末に処刑されて淡水河に遺棄され、遺体は今でも見つかっていない。
王育德／1924－1985
台湾台南市出身。王育霖の弟。台北高等学校、東京帝国大学文学部を卒業し、明治大学で講師、副教授、教授を歴任した。台湾青年社創設者および『台湾青年』創刊者。二二八事件後、兄の王育霖が逮捕、殺害されると、王育徳は即台湾を離れ、さらに1949年に香港から日本に渡り、中断していた東京大学博士課程に戻った。著作に『台湾その苦悶する歴史』がある。一生涯国民党のブラックリストに名が挙げられ、台湾に戻ることはできなかった。
鍾浩東／1915－1950
台湾屏東出身。本名は和鳴、作家鐘理和の弟。台北高等学校を中退した後、日本明治大学在学中に中国へ赴き抗日運動に参加し、帰台後、基隆高級中学校長に就任した。
1947年9月、中国共産党「基隆中学支部」を設立した。1949年5月、基隆中学支部が改組して「中国共産党台湾省基隆市工作委員会」となり、地下組織の機関紙『光明報』を発行した。同年8月に関連組織に保密局の捜査が入り、関係者を次々と逮捕した。これは「基隆市工作委員会事件」と呼ばれ、鐘浩東は8月27日頃逮捕され、12月に感化・思想教育を受けた。政府軍法処が拷問を繰り返して自白を迫ったものの、鍾は屈しなかった。1950年9月9日、ついに死刑の判決が下り、同年10月14日に銃殺された。
許強／1913－1950
台湾台南出身。台北高等学校を経て、1940年、台北帝国大学医学部を卒業し、1944年に反日組織「不定期会」に加入した。1945年8月、謝雪紅が「人民協会」発足を計画し始めた時、「不定期会」のメンバーは「人民協会」台北分会準備会の基本メンバーとなった。
1946年、日本九州大学医学博士号を取得し、同年、国立台湾大学医学院副教授に昇任し、翌年、台湾大学医学院附設医院第三内科主任、台湾大学医学院附設医院院務改革委員会委員に就任した。
1946年に中国上海へ赴き、上海台湾同郷会の李偉光会長および中国共産党地下党組織と連絡を取り、その後正式に中国共産党に加入した。
許強は二二八事件の後、台湾大学医学院附設医院の一部の医師とともに密かに左翼理論関連を研究する読書会を行った。1950年5月13日、許強は「中国共産党台北市工作委員会の台湾大学医学部附属医院支部書記」として逮捕され、同年11月28日に銃殺された。
郭琇琮／1918-1950
台北士林出身。台北第一中学校を経て、台北高等学校高等科を卒業した。1941年4月に台北帝国大学医学部に合格し、1944年、クラスメートの蔡忠恕と台北帝国大学で学生反日組織を設立して逮捕され、5年の懲役を命じられた。1945年に釈放された後、改めて国立台湾大学に入学し、学業を修了した。卒業後、台湾大学医学院附設医院外科医、医学院講師、台北市衛生局防疫科長を務めた。
1947年5月、蔡孝乾と知り合い、密かに学生、農工組織を組織した。1947年10月、中国共産党台北市工作委員会委員に就任した。1948年5月、香港で会議に出席し、6月に帰台した後、台北市工作委員会書記の代理を務めた。その後、正式に書記となり、台湾大学附属医院支部およびその他の所属支部を直接指導した。
1949年10月、台湾地図と工作報告書を香港へ送るため林秋興に預けたが、林秋興が基隆で逮捕されると、郭琇琮は自身に難が及ぶのを恐れて、宜蘭、羅東に移動し、蘭陽地区工作委員会を設立した。1950年4月、さらに嘉義に移ったが、5月2日に逮捕されて死刑の判決が下り、同年11月28日に銃殺刑に処された。
